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科学コミュニケーション論―イギリス(主に王立協会)、アメリカ、欧州の場合― [論文紹介]

[位置情報]水沢光「第1章 英国における科学コミュニケーションの歴史」(藤垣裕子、廣野喜幸編『科学コミュニケーション論』東京大学出版会、2008年)、3-20頁。

[位置情報]水沢光「第2章 米国および欧州の傾向」(藤垣裕子、廣野喜幸編『科学コミュニケーション論』東京大学出版会、2008年)21-38頁。

<概要>「第1章 英国における歴史」 
英国では、古くから、科学を一般に普及するため様々な啓蒙活動が実施されてきたが、近年における科学コミュニケーション施策の直接のきっかけとなったのは、1985年の王立協会の報告書であった。本章では、まず、19世紀の啓蒙活動について簡単にふれた後、王立協会の報告書と、報告書の影響下に設立されたCOPUSの活動について概説した。次いで、BSE問題を契機に政府や科学者に対する不信感が高まり、2000年前後に科学コミュニケーション施策をめぐる政策転換がおこったことを述べた。最後に、科学コミュニケーションに関する2000年以降の状況について概観した。 英国では、1985年の王立協会の報告以降、数々の試行錯誤を重ねながら、科学コミュニケーション活動を発展させてきた。当初は、科学者による公衆の科学理解増進を目指す活動が中心であったが、BSE問題をきっかけに、科学者と公衆の対話を重視する方向へと転換した。英国でおこなわれた様々な活動や議論は、今後の日本において科学コミュニケーション活動を進める際にも大いに参考になるだろう。

<概要>「第2章 米国および欧州の傾向」
 米国および欧州においても、近年、科学コミュニケーションの拡大を図るため、多様な活動が試みられている。本章では、米国における科学コミュニケーション活動の傾向と、欧州における特徴的な活動について概説した。
米国および欧州では、それぞれ多様な科学コミュニケーション活動が実施されているが、大まかに言って、次のような特徴を持っている。米国では、市民の科学研究に対する支持が比較的高く、科学者から公衆や政府に向けた情報発信が盛んであり、また、科学と社会の情報伝達を担う人材の養成が組織的に実施されている。一方、欧州では、市民の科学への関心が相対的に低く、科学技術の急速な発達に対する懸念が強いなかで、科学技術に関する意思決定に市民の参加を促すための取り組みが発展している。各国の社会状況に合わせて発達した多彩な活動は、日本社会に合った科学コミュニケーション活動を探る上でも重要な手がかりになるだろう。


科学コミュニケーション論

科学コミュニケーション論

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本



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